2012年2月29日水曜日

1.27八王子の中小企業を見学してきました!(㈱エイビット編)

地域の中小企業は、日本の産業のサプライチェーンを支え、大企業で起こせないイノベーションの創出に取組み、地域の雇用・人材育成に取組み、そして地域の行政の財源となるなど非常に重要な役割を担っています。T2Sでは、地域の持続可能性を保つ役割の一端として、中小企業が非常に重要であるということから、“中小企業と地域”について連続した企画を行なっています。

1月13日に都庁で産業労働局の奥村課長、鈴木(泰)係長をお招きし、座学で地域における産業振興や中小企業支援(「支援」という言葉は上から目線なので使いたくありませんが。)について考えてきました。今回は、“百聞は一見にもならず”ということで、実際に見て聞いて感じる見学会を企画し、行って来ましたのでレポートいたします。

今回お伺いしたのは、JR八王子駅から徒歩15分圏内にある㈱エイビット(http://www.abit.co.jp/)と㈱エリオニクス(http://www.elionix.co.jp/)です。この2社は八王子市の中小企業のトップを走る企業で、同時に会社へ見学に行けたのは、八王子の産業振興に携わって鈴木泰さんが、10年間かけて築いてきた数百の中小企業の社長との信頼関係及びネットワークのおかげです。あらためて、この企画をサポートいただいている鈴木さんに感謝いたします。

■ただならぬ門構え

はじめに、㈱エイビットさん(以下、エイビット)にお伺いしました。八王子駅から参加者と共に雑談をしながら歩くと、真新しい本社のビルの前に着きました。門構えを見てチョット驚くのは、会社の入り口に多摩大のビジネススクールの看板があることです。会社に入る前に、ちょっと圧倒されてしまいました。

本社ビルに着くと、檜山社長が出てこられ、直接対応していただきました。

■檜山社長は八王子のスティーブ・ジョブズだ!

見学者は15名。会議室(エイビットスクエア?)に案内されて檜山社長からお話しを伺いました。

「エイビットは、ものづくりでも、ITの企業でもない。SonyやNECを小さくしたような会社」

まず、エイビットという会社は、どんな会社なのかという説明がありました。檜山社長は、この会社を高専に通われていたころ17才で立ち上げ、現在53歳。40年経営されてきたとのこと。40年前に17歳の高専生が会社を立ち上げるということが、(悪い意味で)注目を浴びたそうです。この経歴自体に社長にとてつもないパワーを感じさせます。

ちなみに、あまりに面白かったのでプレゼンの写真を取らせて頂きました。上が若かりし頃のスティーブ・ジョブズ、下がビル・ゲイツです。創業期の若いころにお付き合いがあったそうです。ちなみに、檜山社長が仕掛けてMacintoshの日本版をDynaMacとしてCanonから発売し、スティーブ・ジョブズの逆鱗に触れたというエピソードで見学者全員爆笑でした!

■エイビット流 強い製品の作り方教えます

最近、ビジネス誌などにソニーを筆頭に日本の企業は、魅力的な製品を生み出さないといった記事が紙面を賑わしていますが、日本企業はかつてのように魅力的な製品を生み出せなくなってしまったのでしょうか?そうであればなぜ生み出せないのでしょうか?

そのような大企業の苦境を一刀両断するように、檜山社長から強い製品の作り方についての持論を聞かせていただきました。

・エイビットは、変わった製品を作る。(これ自体が凄いですよね!作れるんだから。)

・失敗を恐れるから大企業は同じような製品を作ってしまう。

・エイビットは、失敗を恐れないから売れる製品が作れる。

・大企業の製品開発は、製品を使っていないから何が大切なのかがわからない。

・エイビットは、欲しいものを作る。

そして、エイビットの直近のヒット商品、オフィスで使うような固定電話風のPHS「イエデンワ」とフリスクサイズの極小PHS「ストラップフォン」を手にとり製品開発の考え方についてユーモアを交えて説明いただきました。

檜山社長のツイッターのフォロワーには、アニメ関係者が多いようです。その人達の中で、イエデンワが流行っている。コミケとかで、みんなおもむろにカバンから卓上で使うような大きなイエデンワを取り出して電話しているそうです。想像するだけでおかしいですね。

イエデンワは、持ち歩くこともできますが、充電式乾電池で長時間使用できるので、オフィスでも向いています。配線工事などがいらないとの、持ち運びができます。ちなみに、ウィルコムでは、2年間使用すると本体代金は無料になるプランがあるそうです。参加されていた方の中でもイエデンワを購入された方がいて、便利で通信料も下がったということ。。

また、フリスクサイズのストラップフォンは、販売店では予約待ちの状態。日経デザインの表紙(写真)を飾るなどマスコミの取材が相次いでいるそうです。フリスクサイズにできたのは、エイビットがPHS用の半導体事業をもっているから。フリスクサイズは、もちろんデザインなどにもこだわっていることも開発の狙いにあるようですが、携帯電話事業のニーズを半導体事業部門に要求することで、技術の向上も狙っているようです。

檜山社長は、それらの商品を手に取り、

「マスコミに出るとそれだけのイメージができる。でも、次の世代に引き継ぐために、(会社の)ものづくりの企画をアピールすることがこれから重要になってくる。門がまえのデザインが重要。」

といい、40年経営してきた会社の世代交代を考えているような話に移って来ました。

「エイビットのような会社も接遇が大事だといっている。また、新しいものを創っていくというのは、理念が大事。「執着」「愛着」「愛を念う」」

だんだんと檜山社長の独自の経営理念を語る口調が熱くなって来ました。

はもうダメだとかエイビットの新製品を2つお見せいただき、強い製品の作り方

■エイビット流 強い人材の作り方教えます

強い製品の作り方に続き、人材育成の話へ。檜山社長は、社員の技術者について“だんごむし”社員は、“ホチキスの針”だとおっしゃいます。落ち葉の下で、コツコツと落葉を食べ続ける。単純なことをコモって仕事をし続ける。そういうことでしょうか?ホチキスの針というのは、言われた仕事をきちんとこなす

この表現を聞いて、経営者としての誇り、責任、覚悟をすぐに感じました。いくら社員がすごいこと、偉そうなことをいっても、経営者と社員の間には、相当な違いがあります。これは、行政組織でも同じ事。首長がしっかりと経営しないとだめです。なので、T2Sは考えるダンゴムシ羽根のはえたを育てています。笑

エイビットは、行儀や接遇以外に、専門教育を中堅社員に行なっています。檜山社長の人材育成の情熱は、、本社に多摩大学ビジネススクールのサテライトキャンパスを作ってしまった。「中堅社員をビジネススクールに送り込んで、MBAをとらせると、ダンゴムシの世界が広がる。」檜山社長は満足そうに語っていました。檜山社長自身、高専生時代に起業された。社員の方の中にも、高卒の方がいるらしい。でも、エイビットに務め、高卒から大学院卒へ学歴をアップさせる。経営学修士を取らせる。このことに、檜山社長の社員に対する愛情や経営者としての誇り、自信を感じてしまうのであった。

■これからの時代の生き方

檜山社長は、製品づくり、人材づくりの話からこれからの企業のあり方について話された。

「八王子の中小企業の社長から、『これからの会社の経営をどうして言ったらよいのか?』などと相談を受けることがある。私は、アドバイスの一つとして『金を社員の人材育成につぎ込むべきだ』というのだけど、中小企業の社長たちは、それをどれだけわかっているのか知らないが、そんな相談をしていてその後、酒を呑みに行ってしまう。(私も酒を飲むが)そんな時間があるのなら、学んだり人材を育てることに時間やお金を使うべきなんだけど。」

今までの日本の社会は、山をずっと登ってきた。でももう山を降る時代になってきた。みんな山の登り方は、知っているが、山の降り方は知らない。もっと先を見ていかなければならない。次の3つを高めていきたい。

「進化する力」、「NEBARU力」、「目覚める鼓動」(情熱)

そのため、社内にインキュベーション施設(写真)を作った。そして2つのグループを招き入れた。一つは、アンドロイドを作るグループ。もう一つは、アニメ。

アニメの発想を製品づくりに取り入れようとしている。また、このようなことが、強い地域づくり、人材のスクランブル交差点として力を持っていけたらと考えている。

■檜山節に圧倒され、参加者から社長に質問へ

Q1:このような独自のアイデアの視点はどのように創ってきたのでしょうか?

A1:業界で長くやっていると新しいことだけでなく、古いことも学ぶ。(うまくいくことへの)球筋が見えてくる。過去の人達の成功本をみると、できたかったことが書いてある。(成功は少し、失敗が多い。また、出来なかったことをネタにする。)まっすぐ見ることも大事だけど、曲がってみること、分析する能力が大事。

Q2:製品をつくるときに、このアイデアで行こう!と決めるのは誰でしょうか?

A2:私が決めて、トップダウンで行う。そして社員と話す。たまに、社員からもアイデアが出てくる。

Q3:エイビットで社長がいなくなったら会社はどうなるのですか?

A3:会社を受け継いだ人が、業種を変えたらいいと思う。次のリーダーに任せる。

Q4:八王子に会社を置いたのはどのような理由でしょうか?

A4:都市銀行があるなど立地条件。八王子では、立地条件を生かし新しい通信の実験もした。また、都心に行くと全体の一つの企業となって存在感がなくなる。八王子だから価値がある。これから時間と距離を縮める実験をしていきたい。

Q5:新しいものを創るのは、技術系じゃないとダメでしょうか?

A5:私は、20年後は、日本の企業はだめになると思っている。それは、今48歳以上の人たちの影響力がなくなるからだ。なぜ、48歳以上かというと、物がないことを知っているからだ。新しいものは、無いことを知らないとできない。ものがありふれて、選択だけしているような人には、新しいものはつくれない。アニメの中の発想は素晴らしいものがある。ただ、アニメータなどの処遇が悪いのが問題だ。だからインキュベーションをつくってアニメとの関係をつくっている。

最後に、檜山社長のプレゼンは、檜山社長の思いとユーモア満載でまさにスティーブ・ジョブズばりでした!製品とともに社長の人柄、思いにすっかりファンになってしまうのでした。その後、イエデンワとストラップフォンを探しに、ヨドバシへ。。

檜山社長 お忙しいところ丁寧に対応いただきありがとうございました。

次回、㈱エリオニクス編に続きます。乞うご期待!!

0 件のコメント:

コメントを投稿